家の性能、どこまで追求する?

住宅ブログ

前回の『家づくりを進める上で知っておきたい指標』にて家の良し悪しを比較するための物差しを紹介させていただきました。住宅展示場巡り等、情報収集を進めている方はお気づきのことだと思いますが、指標を良くすれば良くするほど家の性能は向上していきますが、それに比例して価格も上がっていきます。そこで、限られた予算をどのように割り振っていけばよいか、各数値の目安を紹介します。

UA値

『UA値』は住宅の内部から外部に向けて熱がどれだけ逃げていくかを表した数値になります。この数値が良いほど(値が小さいほど)冬は暖かく、夏は涼しい家にすることができます。UA値の目安は『一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会』様が制定している『HEAT20 G1・G2 断熱性能推奨水準 外皮平均熱貫流率』を参考にすると良いと思います。これは日本を7つ(厳密には8つ)の地域に分け、それぞれの地域に適したUA値の目安を示したものとなります。 『HEAT20 G1・G2 断熱性能推奨水準 外皮平均熱貫流率』 には『 G1 』と『 G2 』に二つの規格がありますが、 『 G2 』 の方が最新の規格となっており、 『 G2 』 の方が厳しい基準(要求される数値が高い)となっていますが、基本的には 『 G2 』 の基準を満たすことが推奨されます。

使い方としては、まずこちらのページにアクセスし、左上の『① 地域の選択』に調べたい地域もしくはその地域の気候に近しい地点を選択します。(より正確に調べたい場合は『地図から選択』機能を使用してください。)地域を入力すると同ページ内の『地域区分』が入力した地域に対応した数値に遷移しますので、対象地域の数値を確認します。
次にこちらのページの『HEAT20 G1・G2 断熱性能推奨水準 外皮平均熱貫流率 UA値[W/(m2・K)』の項目を参照し、対象地域の『 G2 』欄に記載された推奨UA値を確認します。
例えば東京都だと地域区分は『6』となるため、『 G2 』の推奨UA値は『0.46』となります。

なお、 推奨UA値を満たす、あるいは、それを上回るに越したことはありませんが、必ずしも満たす必要はなく、近似値であれば問題ないです。例えば推奨UA値が『0.46』であったとしても、UA値が『0.44』でも『0.48』でも体感できるほどの誤差はないため、あくまでも目安としてお考え下さい。

余談ですが、 『HEAT20 G1・G2 断熱性能推奨水準 外皮平均熱貫流率 UA値[W/(m2・K)』の項目 を見てわかる通り、暖かい地域に行けば行くほど推奨されるUA値が緩和していくことがわかります。家づくりの中で地域の移動を考えている方は参考にしてみてください。

また、公式には発表されていませんが、 『 G3 』 規格も制定されています。『G2』規格で十分な性能が担保されていますが、UA値を極めたい方は挑戦してみてください。

ポイント
  • UA値は『HEAT20 G2』規格を参考にするとよい。
  • 推奨UA値は必ずしも満たす必要はなく近似値であれば問題ない。
  • 暖かい地域に行くほど推奨UA値が緩和する傾向にある。

C値

『C値』は住宅にどれだけ隙間面積があるかを表した数値になります。C値は一般的に『1.0』程度にするのが良いと言われているようです。これは換気方式の一つである『3種換気』を行った際に、計画通りの換気が行われることを期待した目安となっているようです。しかし、C値は住宅の経年劣化により悪化する(数値が大きくなる)傾向にあります。そのため、新築時は『1.0』あったのに、10年、20年と経年劣化が進むにつれ、C値が悪化していき、いつの間にか換気が計画通り行われなくなっているというケースも想定されるため、新築時にできるだけC値を高めておく必要があります。

C値を良くすると住宅の隙間面積が少なくなり、計画的な換気を実施することに貢献したり、外気や部屋内の空気の出入りを防いだりする効果がありますが、C値が『1.0』を切るとその効果がほとんど誤差程度になります。そのため、「どこまで極めるか」という世界になってしまうため、新築時に『1.0』を切っていればよいと考えましょう。ちなみに私は新築時にC値『0.4』程度を見込んだ家づくりをしました。

ポイント
  • C値は『1.0』を目安に検討するとよい。
  • C値は住宅の経年劣化とともに悪化していく傾向にあるため、これを想定した数値にする必要がある。
  • C値は『1.0』を切るとほとんど誤差。

耐震等級

『耐震等級』は住宅がどれだけ地震に強いかを示した値です。前回の記事でもお伝えした通り、耐震等級は1~3のレベルがあり、数値が大きい方が地震に強い家と言えます。

『耐震等級1』は震度5~6の大地震に耐えることができる強度を持っています。『耐震等級2』は耐震等級1の『1.25』倍の強度を持っており、『耐震等級3』では耐震等級1の『1.50』倍の強度となります。字面だけで判断すると、『耐震等級1』で十分に感じると思いますが、私は『耐震等級3』で検討するべきだと考えます。

2016年に発生した熊本地震地震を例に見てみると、この時の最大震度は観測史上最大の『震度7』を記録し、全壊が『8,667棟』、半壊が『34,719』棟、一部破損が『163,500』棟という甚大な被害をもたらしました。この被害の内、『耐震等級3』の住宅における被害件数はわずが『16』棟で、内2棟が一部破損、『14』棟が無被害と言う結果でした。また、一部破損した住宅の状況はと言うと、壁にヒビが入る程度の被害で、震災後も住み続ける事ができるという程度でした。

もちろん、『耐震等級3』の住宅と比較し、そうでない住宅の方が圧倒的に多いため、フェアな比較とは到底言えませんが、『耐震等級3』の必要性がお分かりいただけるかと思います。(詳細はこちらを参照ください。)

南海トラフ地震等、大地震のリスクが高まっている今、地震に強く災害後も住み続けられる家を保有しているということは、大きなメリットになるといえるのではないでしょうか。

ポイント
  • 耐震等級は『3』が必須。
  • 被災後もわずかなメンテナンスで住み続けることができる。

さいごに

家づくりを進める上で知っておきたい指標について、目安を紹介させていただきましたが、いかがだったでしょうか?限りある予算を上手に使う参考になれば幸いです。

ここまで記事を読んでくださると、ハウスメーカーや工務店をどこにしようか検討できるようになるかと思います。次回は『工法と家の形について知っておきたい基礎知識』を紹介したいと思います。

実は同じ家を作るにしても様々な工法があり、それぞれにできることとできないことがあります。また、ハウスメーカーや工務店によっても得手不得手があり、「この工法で建てたい!」と思っても、ハウスメーカーや工務店によっては対応不可の場合もあります。

また、せっかく立てる家ですので、おしゃれにしたいという気持ちもあると思いますが、家の形によって性能や、光熱費等のランニングコストに差が出る場合があります。家の外観を決める前に、外観を変えることでどのような影響があるのかを理解しておきましょう。

次回もお楽しみに!

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